統計学は、英語・会計と並んでビジネスパーソンに求められる必須の知識になっています。なぜなら、商品企画・生産管理から経営戦略の策定までが、データに基づいて行われるようになってきたからです。
統計学を学ぼうというとき、その初級レベルを証明する代表的な資格として「統計検定3級」があります。
この記事では、「統計検定3級について詳しく知りたい」という方を対象に、以下のことをご説明いたします。
本記事の内容
- 統計検定3級はどんな資格?
- 統計検定3級の出題範囲は?
- 統計検定3級の難易度・合格率は?
- 統計検定3級の勉強方法・勉強時間は?
- 統計検定3級取得後の次なる展開は?
盛りだくさんの内容なので、目次から興味あるトピックへ進んでくださいね。
当記事は、2021年5月時点の情報を参考にしています。(初投稿は、2020年8月です。)
【目次】 クリックで項目へ
統計検定3級はどんな試験?
統計検定は、日本統計学会が公式認定している「統計に関する知識や活用力を評価する全国統一試験」です。
試験の種類は10種類あり、大きく分けて3つのカテゴリーに分類できます。
カテゴリー | 統計検定の資格試験の種類 |
統計に関する知識やデータ分析力を評価 | 1級・準1級・2級・3級・4級 |
統計調査に関するもの | 統計調査士・専門統計調査士 |
データサイエンスに関するもの | データサイエンス基礎・発展・エキスパート |
統計検定4級は、主として中学生~高校生向けの内容です。数学が得意でない方であっても、大学生や社会人の方は統計検定3級から受験することで十分でしょう。
統計検定3級の概要については、以下のとおりに整理できます。
試験の概要 | 「データ分析の手法を身に着け、身近な問題に生かす力」 |
試験の内容 | 大学基礎統計学の知識として求められる統計活用力を評価し、認証するための試験 (1) 基本的な用語や概念の理解を問う問題(統計リテラシー) (2) 不確実な事象の理解、2つ以上の用語や概念の関連性を問う問題(統計的推論) (3) 具体的な文脈に基づいて統計の活用を問う問題(統計的思考) 具体的な内容は次のコーナーを参照 |
出題形式 | 4~5肢選択問題 |
試験時間 | 60分 |
合格水準 | 100点満点で70点以上(PBT試験)、65点以上(CBT試験) |
受験資格 | 特になし |
受験形態 | PBT試験(紙ベースの試験)および CBT試験(コンピュータを使った試験) |
受験時期 | PBT試験:6月、11月(PBT試験は2021年6月にて終了) CBT試験:全国の約200会場から選ぶ |
受験会場 | PBT試験:札幌、東京23区内、名古屋、大阪地域、福岡地域 CBT試験:年間を通して実施 |
受験料 | PBT試験:4,000円 CBT試験:6,000円(一般)、4,000円(学割) |
PBT試験は従来からある試験会場でのペーパーテストです。統計検定3級のPBT試験は2021年6月をもって終了となり、その後はCBT試験のみになります。
CBT試験はコンピュータで受験するテストで、全国の会場で年間を通して実施されます。自宅での受験はできません。
CBT試験では、合格証に「CBT方式試験での合格」であることが記載されますが、資格としては従来の紙ベースの試験と同じです。履歴書にも、「統計検定3級」と記載することができます。
CBT試験を受ける場合には、下記の通り、そのメリットとデメリットをよく理解しておくようにしましょう。
【メリット】
- 都合のよい日時で年間を通して受験できる
- 全国の最寄りの試験会場で受験できる
- その場で試験結果がすぐわかる
- 前回の受験から7日間あければ再受験できる
【デメリット】
- 一般価格の受験費用は6,000円と従来の紙ベースよりも割高(学割は4,000円で紙ベースと同じ)
- 画面で問題文やグラフを読むことに慣れておく必要がある
- 紙ベースのように問題文に書き込みができない(計算は配布される計算用紙上で行う)

試験では、電卓を持ち込むことが可能です。持ち込み可能な電卓は、四則演算(+-×÷)、百分率(%)、平方根(√)の計算ができる一般電卓または事務用電卓を一台持ち込むことができます。
統計検定3級にはどんな問題が出るのか?
具体的な出題範囲
上記の表での試験内容は、ちょっと抽象的でイメージしづらいですね。
具体的な出題範囲としては、大きくわけて、(統計検定4級の範囲を含んだうえで)以下の10のカテゴリーになります。
項目 | 具体的な内容 | |
1 | データの種類 | 量的変数、質的変数、名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比例尺度 |
2 | 標本調査と実験 | 母集団と標本、実験の基本的な考え方、国勢調査 |
3 | 統計グラフとデータの集計 | 1変数データ、2変数データ |
4 | 時系列データ | 時系列グラフ、指数(指標)、移動平均 |
5 | データの散らばりの指標 | 四分位数、四分位範囲、分散、標準偏差、変動係数 |
6 | データの散らばりのグラフ表現 | 箱ひげ図、はずれ値 |
7 | 相関と回帰 | 散布図、擬相関、相関係数、相関と因果、回帰直線 |
8 | 確率 | 独立な試行、条件付き確率 |
9 | 確率分布 | 確率変数の平均・分散、二項分布、正規分布、二項分布の正規近似 |
10 | 統計的な推測 | 母平均・母比率の標本分布、区間推定、仮説検定 |
1番から6番については、具体的内容からもわかるように、基本的な定義の理解やグラフの読み方などが中心のため、あまり数学的な側面は強くありません。そのため、もともと数学に苦手意識のある文系の人でも「比較的勉強しやすい」エリアです。
出題範囲の追加に留意しよう
2020年4月からは、新しい出題範囲として、7番の「相関と回帰」、9番の「確率分布」、10番の「統計的な推測」が追加されました。
それ以前に受験&合格された方の体験談では、これらの部分が抜け落ちている場合があるので注意しましょう。
これらの新しい出題範囲より、出題内容に数学的な要素が増えたため、従来と比べて「きちんと準備をして受験する」ことが必要になりました。

過去問題の例
統計検定のウェブサイトには、現在行われているCBT式(コンピューター式)の試験での過去問題例は出ていないのですが、過去の紙ベースの試験の過去問題が、ウェブサイトに掲載されています。

統計検定3級の難易度と合格率は?
統計検定3級の難易度
統計検定3級は、高校での数学Ⅰの「データの分析」相当の知識と、それらを身近な問題解決に活かす統計的問題解決力が目標となっており、統計学の初級レベル(基礎統計学)で求められる統計活用力がテストされます。
したがって、高校できちんと数学を学んだ方や、大学で統計学の単位を勉強中や取得済みの方にとっては、難しいものではありません。
ただし、一般的な検定試験の3級レベル(例えば「英検3級」や「簿記3級」)と比べると、2020年4月に新しい出題範囲が追加となったことにより、「3級」という言葉の印象よりは、専門的な3級といえども「数学的な素養を含めた統計学の基礎」を求められる内容となっています。
また、実際の試験においては60分で30問を解答することになりますから、わからない問題に時間をかける余裕はありません。時間を意識して問題を解く練習が必要になります。
- ネットに出ている体験談では、もともと「統計学」に何らかの興味を持っていた方が比較的に多いので、すべてを鵜呑みにしないで、参考程度にしましょう。
- 文系の方にとっては、「統計学」というとハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。それでも、統計検定3級は、常識の延長で理解できる部分も多く、しっかり準備をすれば恐れる必要はありません。公式テキストと過去問題集を使ってきちんと準備するようにしましょう(詳しくは後述)。
- 公式テキストの説明においては、ある程度の数学の基本知識が前提となっている面もあります。ひとりで読み進めるのが難しい場合には、統計の入門書や統計検定3級の対策コースなどを利用してみましょう。
統計検定の合格水準と合格率
統計検定3級の合格水準は、統計検定のウェブサイトによると、PBT試験では100点満点で70点、CBT試験で100点満点で65点となっています。
合格率については、過去の統計検定3級(PBT試験)の記録を見ると、大体6割~7割で推移しているようです。「統計学」ということで、比較的にきちんと勉強をして試験に臨む方が多い状況での合格率といえるので、統計学のバックグランドがない方は、甘く見過ぎないほうがよいかもしれません。

統計検定3級の勉強方法・勉強時間は?
ここでは、統計検定3級の「試験対策」としての勉強法の例をご紹介します。
「公式テキスト+過去問」で学ぶ
日本統計学会による公式教材として、統計検定3級対応のテキストと過去問題集があります。
これらを用いて勉強するのが、もっともスタンダードな試験対策方法です。
過去問については、さらに前の分として、2014年~2016年分、2011年~2013年分が出版されていましたので、これらは中古であれば入手できるかもしれません。
自分でテキストを読み進めることができる「基礎的な数学リテラシー」と「集中して勉強できる環境」があれば、これらを使った独学がおすすめの勉強法です。
この場合は、「公式テキストで内容の理解⇒練習問題⇒過去問題集で実践練習」という流れで進めていきます。
過去問については、必ず数年分をするのがおすすめです。特に、直前に時間をはかっての練習をするようにしましょう。
CBT試験での留意点
PBT試験とCBT試験では、試験範囲に違いはありません。ただ、CBT試験では画面を見て問題を解いていくので、画面をまたぐ長文問題を解きづらい、という点があります。この点を考慮して従来より長文問題が減る傾向にあるようです。
想定される勉強時間については、個人の数学リテラシーによって違ってきますが、たとえば公式テキスト(補足を除くと全部で195ページ)を平均1時間5ページで進めるとすれば、約39時間になります。
これに、過去問題集を解く時間を加えて、合計で約50時間というのがひとつの目安例になり得るでしょう。
「大学の授業で統計学を勉強した人」や、「統計学の素養がある人」の場合には、この時間より短くなります。
反対に、「数学が苦手気味の人」や「統計学の素養がまったくない人」は、この時間より長くなると考えて、学習計画をたてていきましょう。
テスト勉強開始前のウォーミングアップにおすすめの書籍
公式テキストをいきなり読み始める前に、もう少し読みやすい本でウォーミングアップしたい方もいるかもしれませんね。
そんな方に向けて、以下の2冊をご紹介します。

統計検定3級対応のスクールで学ぶ
自分で勉強するより講座で勉強したいという方には、統計検定3級に対応した講座もあります。
スクールでの勉強は、独学に比べて費用はかかりますが、以下のようなメリットが考えられます。
スクールで学ぶメリット
教材を目で読み、説明を耳で聞くことにより、独学よりも勉強を進めやすい。
コースに沿って勉強を進めていけるので、学習計画をたてやすい。
質問に対応してくれるコースでは、わからない点を解決できる。
コースにより「演習」や「まとめ」などがあるので、効率的な試験対策ができる。
自分ひとりでの勉強と比べて、モチベーションを維持しやすい。
以下に、統計検定3級に対応しているコースをいくつかをご紹介しますので、参考にしてください。
新型コロナウィルスの影響により、コースの開催や運営に変更がある場合があります。最新の情報は、必ずコース運営者に確認するようお願いします。
スクール名 | コース名 | コース形態 | 料金例 |
代ゼミライセンススクール | 統計検定で学ぶ!高校生からの統計学(3級対応) | インターネット受講 受講年度内で3回までの受講回数制限あり |
本講座6,100円 オプション講座【確率】1,500円 |
産業能率大学 | 統計検定3級受験対策 | 通信 添削2回(Web提出可) 受講期間2ヵ月・在籍期間4ヵ月 |
12,100円 |
資格の学校TAC | 統計検定3級・4級対策講座 | Web通信講座 受講期間は約1ヵ月 |
39,000円 |
ソフトキャンパス | 統計検定3級対応講座 | 一対一講座 | 73,040円(テキスト代込み) |
和から「統計教室」 | ゼロからはじめる統計学-統計検定3級範囲- | オンライン開催 (Zoom) 全4回 |
45,000円(Web申込み割引) |
上記はレベル的には統計検定3級に対応しているコースですが、金額には大きな差があります。内容を確認して選ぶようにしましょう。
オンラインでも、受講の期間や回数が限られている場合もあります。受験する時期から逆算して、予定をしっかり確認する必要があります。

統計検定3級取得後の展開は?
統計検定3級を取得後に、さらに統計分野での勉強を深めていきたい場合には、いくつかの選択肢・シナリオが考えられます。
以下は、一般的に考えられる例に過ぎませんが、「統計スキル」をキャリアに活かしていきたい場合の参考にしてください。
統計検定3級を取得後に想定されるシナリオ例
(1)「統計検定2級」取得へと進む。
・その後に「データサイエンス」のスクール&資格などを利用しながら、より幅広くデータサイエンス関連の勉強をして、就職や転職において「データサイエンティスト」や「データアナリスト」などの職種を目指す、という道が考えられます。
・統計オンリーの専門家というよりも、マーケティング・ビジネス・ITなどの専門分野と統計スキルを掛け合わせてのキャリアにおいて、一層の強味を発揮します。
以下は、データサイエンス系の資格の例です。
・統計検定 データサイエンス 基礎:2021年7月にCBTにて試験開始予定
・統計検定 データサイエンス 発展:2021年7月にCBTにて試験開始予定
・統計検定 データサイエンス エキスパート:2022年2月にCBTにて試験開始予定
・G検定(ジェネラリスト検定):日本ディープラーニング協会によるジェネラリスト向けの資格
・E資格(エンジニア資格):日本ディープラーニング協会によるエンジニア向けの資格
データサイエンスを学べるスクールについては、以下の記事も参考にしてください。現在、国による専門実践教育教育訓練給付金を受けて、非常にお得に受講できる制度があります。 続きを見る
【Reスキル講座】データサイエンスおすすめコース3選《転職サポートあり》
(2)「統計検定2級」を経て、さらに「統計検定準1級」「統計検定1級」の資格へ進む。 続きを見る
・統計検定1級の応用分野にあるような、人文・社会・医療・理工における高度な統計の専門職の道が考えられます。例えば、
- 国内大学院などで修士レベルの勉強をして、公的および民間の研究機関などでの統計専門職を目指す。
- 海外の大学院で修士レベルの勉強をして、国際機関や外資系企業での行動な専門職を目指す。
などは、キャリアプランの一例です。
統計学・データサイエンス分野での国内大学院については、以下の記事も参考にしてください。
データサイエンスを学べる日本の大学院修士課程【社会人にもおすすめ】
(3)「統計調査士」取得へと進み、その後に「専門統計調査士」へ進む。
・公的統計を利用した各種の調査プロジェクトやコンサルティングなど、仕事やキャリアに統計調査の専門知識を活かしていく道が考えられます。
・日本は公的統計の分野が他国と比較して遅れているので、さまざまな形で活躍のベースが広がることが予想されます。
統計調査士については、以下の記事も参考にしてください。
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統計調査士の難易度・合格率・勉強時間は?【おすすめ勉強法も紹介】
続きを見る
このように、「統計学」を自分の仕事・職種に活かしたい場合、「統計検定3級」を出発点として、いろいろなキャリアの可能性が考えられます。

まとめ:統計検定3級をスタートにしてキャリアの可能性を広げよう!
これからの時代、どのような道を歩もうとも、統計学の基本は抑えておきたい分野です。
統計検定3級を取得することで、統計学の初級レベルをマスターするとともに、資格取得によってその知識の証明も得て、統計スキルを活かしたキャリアの最初の一歩にしてみませんか?
当記事が、統計検定3級の受験を考えている方の参考になればうれしいです!
統計検定3級のおすすめ参考書
- 統計検定3級対応 データの分析(公式テキスト)
- 統計検定 3級・4級 公式問題集[2017〜2019年](過去問題集)
- 文系のための統計学の教科書
- マンガでわかる統計学入門